その前年の夏、英国の8歳の少年が海岸で龍涎香を見つけ自宅に持ち帰ったところ、こちらも500万円の価値があった。
龍涎香は、マッコウクジラの腸内に発生する結石で、消化できなかったイカなどのエサが消化分泌物により結石化し、排泄されたものと考えられている。石といっても海水より軽いので、海岸まできて打ち上げられたわけだ。
なぜこのようなものが価値があるかというと、ジャコウの香りがして、香木のような香料として使えるから。マリリンモンローで有名なシャネル5番にも含まれているという。
龍涎香の名は、中国で龍のよだれ(涎)が固まったものと考えられたから。商業捕鯨が行なわれていたころは、腸から取り出して利用されていたが、現在は海岸で拾うしかない。それだけに貴重というわけ。
龍涎香は、日本では「てんかん」や「チフス」の特効薬としてかつて使われていた。また、アラビヤ、インド、中国では媚薬や催淫剤としてハレムや後宮で用いられた。
現在はクジラは捕獲できないので、類似の匂い物質が合成されて香水に使われている。それでも、天然ものは希少、貴重で、高価だ。