日本人のピロリ菌感染者の数は約3,500万人といわれている。3人に1人。40歳以上の人では、70%以上の人が感染しているという。
ヘリコバクター・ピロリ菌は、1983年オーストラリアのロビン・ウォレン (J. Robin Warren) とバリー・マーシャル (Barry J. Marshall) により慢性胃炎、胃潰瘍の原因菌として発見された。これらの功績により、2人は2005年ノーベル賞を受賞している。
従来、胃液は塩酸によって強酸性であるため、細菌は生息できないと考えられていた。しかし、ピロリ菌はウレアーゼと呼ばれる酵素を産生しており、この酵素で胃粘液中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、生じたアンモニアで自分のまわりを中和することによって胃に定着できる。
ピロリ菌は、ほとんどが5歳以下の幼児期に感染する。大人はキスなどでも経口で感染することはほとんどない。幼児期の胃は酸性が弱く、ピロリ菌が生きのびやすい。ピロリ菌に感染している大人が食べ物の口移しなどで子供にあげるのが感染の大きな原因になる。一度感染すると多くの場合、除菌しない限り胃の中に棲みつづける。
ピロリ菌に感染しているかどうかは簡単なテストで確認できる。検査薬を服用し、呼気から測定する方法、血中の抗体を調べる方法、便中のピロリ菌を抗体で検出する方法などがある。最近は自宅で検査するキットなども売っているようだ。同時に除菌するキットも売っているが、除菌は抗生剤を使うので基本的にお医者と相談したほうがよいと思う。検査の保険適用は、胃潰瘍だけでなく、2013年2月から慢性胃炎に対しても適用されるようになった。