たまたま気になった言葉。もうあまり使わなくなった「梨の礫(つぶて)」について。
便りを出しても何の返事もこないことや音沙汰のないことを「梨の礫」というのはご存知と思う。「つぶて(礫)」は、投げる小石や小石を投げる行為の意味。梨を投げるわけではない。「梨」は「無し」という意味。「梨」に「無し」を掛けただけ。
では、本来の意味で「無しの礫」と書いてよいかというと、これはまちがい。「無し」だと投げるものがなくなる。
平安時代、好きな相手に告白するのに、歌を詠んで送り、相手は歌で返す風習と同じように、礫(つぶて)を相手に投げて、好意がある場合には礫が返ってくるという風習もあった。好意がなければ、礫なしで「なしの礫」となる。
というわけで、「梨の礫」の「梨」には果物の梨の意味がまったくなかった。
ついでに、梨の語源について。1説には、芯の方が酸っぱいので「中酸(なかす)」から「なし」になったという。