2014年4月10日木曜日

STAP細胞のリケジョ騒動 なにが悪かったのか (2)

STAP(スタップ)細胞を発見したリケジョ、小保方(おぼかた)晴子博士が1月末の華々しい成果発表から70日ぶりに公の場に姿を現した。

彼女は、様々な臓器や組織の細胞に変化できる新たな万能細胞としてSTAP細胞を作製することに成功した。これは、2012年ノーベル賞を受賞した山中伸哉博士の人工多能性幹細胞(IPS細胞)を超えるもので、若干30歳、理系の女子「リケジョ」による快挙と思った(以前のblogはココ)。

STAP細胞もIPS細胞も、治療が従来不可能だった多くの病気を治療できる再生医療に貢献するものである。夢の治療として多くの難病患者が特に期待している。

その後、天地がひっくり返るほどの変化が起こった(以前のもう1つのblogはココ)。

研究成果を有名科学ジャーナル「Nature」に発表後、彼女の研究の追試が、世界中各所で行なわれたが、再現できないというクレームが出てきた。一方、この論文の図が、彼女の博士論文の使い回しで、かつその博士論文の細胞はSTAP細胞の図ではなかったことが、ネット上で暴露された。他にも複数の論文の画像のねつ造、改ざんが問題視された。

これを受け、彼女が所属する理化学研究所の調査結果が報告され、研究の不正、ねつ造と裁定された。これに関わったのは、小保方氏一人だけということだった。

先日、この裁定に対して、小保方氏は不服申し立てをおこなった。そして、9日、記者会見で自ら説明することになった。

この一連の騒動の中で、小保方氏本人、理化学研究所、出身大学の早稲田大学、さらにマスコミ、それぞれに過誤がある。

まず、小保方氏本人は、その不服申し立てで、間違って学位論文の写真を使ってしまったのであり、悪意はなかったという。最も大事な写真を間違うことはありえず、悪意という言葉が当たらずとも意図的にやったと考えられる。見栄えをよくするために、この写真を選んだとのことだが、見栄えをよくするのが目的ではなく、証拠を見せるのが研究ではなかろうか。

信号を赤で渡って、赤で渡って悪いとは知らなかった(悪意はなかった)というようなもの。

この研究者としての常識を知らない点で、研究者としての教育に明らかに問題がある。不服申し立て書の中で、「論文の作成方法について教育を受ける機会に恵まれなかった」と本人も書いている。早稲田大学の教育、博士号の審査方法が問題であることは明らかである。

小保方氏の博士論文の序章20頁が、米国NIH研究所のホームページのコピペであることもネットで暴露された。コピペが間違った行為であると理解していないのは、それを教えていないと早稲田大学がとがめられてもしかたがない。学位審査は3人以上の教授が何度も審査しているはずなのに。

早稲田大学は、当該研究科の過去の全博士論文を対象に、盗用などの不正の調査を行うことにしたという。ここまで話が大きくなったため、小保方氏の博士号の剥奪はやむを得ないが、他の博士号まで見直すことをせず、今後不正が起こらないような厳格な審査をすると、未来志向の解決でも済んだと思う。再調査は、傷口に塩を塗ることにならないことを祈る。

理化学研究所こそ、今回の騒動の最大の責任を負う。理化学研究所は、年間予算850億円の税金を使う国の基礎研究所。政府は、STAP細胞の報道を契機に、理化学研究所を多額の予算が得られる「特定国立研究開発法人」に決定する予定だったが、先送りした。

理化学研究所は、この予算獲得を狙って、十分な検討もせずに、STAP細胞を目玉にして花火を上げ、若い小保方氏を前面に出してしまった。今回、調査結果が報告され、研究の不正に関わったのは、小保方氏一人だけと、トカゲの尻尾切りをしようとしている。

研究所の説明の中で、小保方氏を一人前でない、未熟といっておきながら、教育管理していなかったのは、責任が重い。日本の科学の中心である理化学研究所が、これまでの日本の高い科学能力に対する世界的評価を下げることをしてしまった。この罪は大きい。

韓国で、9年前にヒトの胚性幹細胞(ES細胞)の研究で韓国人初の(平和賞以外の)ノーベル賞受賞と韓国国民の期待を一身に集め国民的英雄であった教授が、実は論文をねつ造していたことが分かった事件があった。これを多くの日本人は笑ったが、今回の騒動で笑えなくなった。

マスコミも、毎日のように小保方氏の顔や動画を繰り返し出し報道を続けた。考えてみれば、若干30歳の若い1科学者の不正をこれほどまで報道し続ける必要があったのだろうか?涙を流して会見にのぞむ彼女の絵がほしかっただけではないか。

研究ノートが2冊しかないということが、どれだけ報道価値があるのだろうか?

昨日の会見で、小保方氏はSTAP細胞が存在するとしている。成功している証拠があるとしながら、証拠を明示しなかった。彼女は存在を信じているようだが、本当に存在するかは誰の目にも懐疑的である。

今後、不服申し立てに対して、再度調査委員会が開かれることになる。再度、不正、ねつ造と裁定されれば、論文の撤回、懲戒処分ということになるだろう。こうなれば、裁判闘争も起こりうる。研究者倫理に抵触しても、法的には、悪意があったか証明できないだろう。

理化学研究所は1年かけて、小保方氏を加えないでSTAP細胞の存在を確認するとしている。存在しないかもしれないものを、理化学研究所のメンツでやらされる研究者は不幸ではないか。税金を使って行なう必要があるのだろうか?

STAP細胞の存在が真実かどうかは、歴史が証明してくれると思う。今証明しなくとも、真実ならば、必ずいつか明らかになるはず。

前にも書いたが、STAP細胞が彼女の(悪意のない)狂言であるならば、2ヶ月前の報道で、多くの難病に苦しむ人たちの期待や、リケジョとして基礎研究をやってみようと夢みた若者たちの希望を打ち砕いた罪もまた大きい。

小保方