その理由としてどのようなものが考えられるだろうか。社会的要因では、男性が仕事を主にしている場合、社会的ストレスが直接、もしくは間接的に寿命を縮めていると言われている。実際、女性の社会進出が進んでいる北欧諸国では、寿命の男女差は縮まってきている。
男性より女性の方が、生物としては弱いらしい。子供として育てるのに、男児の方が弱く病気になりがちで難しいというのは、昔から言われていること。統計的にも、男児の死亡率が女児よりも高い。先進15カ国の1970年頃の乳児死亡率の男女差は30%もあった。
帝王切開の普及などにより、男児の生存率が向上してきたが(帝王切開普及の前は男児は死産しやすかった)、新生児でみても1.2倍程度女子より死亡率が高い。
生物学的には、この女性の生存の強さについて、いくつかの説明がある。
1. 染色体の違い
ヒトの染色体の数は46本だが、そのうち2本が性染色体で、女性はX染色体を1対(2個)持っているのに対し、男性はX染色体を1個しか持っていない。 女性では片方のX染色体に欠陥があっても, もう一方のX染色体が欠陥を補ってくれるので問題はない。
しかし、男性の場合は、X染色体に欠陥があるとそのままその欠陥の影響が表れる。結果として、寿命が短くなる。
2. 免疫力の違い
男性の方が、免疫力が低いことが知られている。男性ホルモンであるテストステロンは、免疫力を抑制する。動物実験で、去勢すると寿命が伸びることは多くの動物で知られている。細菌など微生物に感染した時に、女性の方がすばやく排除できることも知られている。
一方、女性ホルモンは、血圧を下げ、高血圧症や動脈硬化を抑制する。このため、動脈硬化は女性よりも男性に多く見られる。(ただし、閉経後、女性ホルモン減少に伴い、進行スピードが速まるので、肥満も含めて動脈硬化について女性も注意が必要。)
3. 代謝の違い
男性の方が、性ホルモンのせいで、筋肉が発達し運動能も高い。結果として、代謝量が増し、活性酸素も増えて、老化が早まる。
そもそも、男女の性分化がどうしてあるのか、男女どちらも同じくらい強くてもよいと思うのに、なぜ男性が弱くなっているのか、そのメリットはなにか。今後考えてみます。
生命線はどれ?